賃貸マンションやアパートを退去する時に求められるのは「原状回復」。
でもどんな状態まですればよいのか、よく分からない部分もありますよね。
部屋を退去するときに、「借り主はどこまでキレイにすればよいのか?」悩んでしまうものです。
入居時に敷金を払っている場合は、原状回復費が差し引かれて返還されます。
引越しの時に敷金はどれくらい戻ってくるものなのかも気になるところです。
そこで、原状回復の定義や貸借人の負担義務については『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(国土交通省:平成10年3月に制定)』が参考になりますので、大切なポイントを解説します。
原状回復をめぐるトラブルとは?
原状回復は、敷金の返還ととても深い関係があります。
引越し部の調査では、以下の様な原状回復のトラブルが多いことがわかりました。
- 「ハウスクリーニング代を払わされた」
- 「壁紙(クロス)の洗浄費用や張替えの費用が発生した」
- 「床やフローリングのキズやシミ汚れの補修費用を請求された」
- 「畳の交換費用を請求された」
- 「ふすまが破れていたため交換費用を負担することになった」
- 「タバコが原因で敷金が返ってこなかった」
- 「鍵の交換費用を請求された」
- 「キッチンやバスルームの水アカ汚れのため、追加費用を請求された」
例えば、タバコのヤニで壁紙(クロス)がきばんでしまったり匂いがついてしまった場合や、釘やネジ・画鋲で壁紙に穴を開けていた、ペットを飼っていて壁紙を破いてしまった場合などにはクロスの全面張替えをしないといけない場合があります。
ワンルームでも全面張替えとなると、6万から12万など非常に大きな負担になってしまいます。(2LDKなど部屋が増えれば壁の面積も増えますので、場合によっては30万や60万など高額になることも)
引っ越しをする場合には、いろいろとお金がかかるものですが、敷金でまかなえればよいですが、退去時の原状回復で更に追加料金が発生して思わぬ負担に驚いてしまうこともあります。
敷金はどれくらい戻ってくるのか?
最近では「敷金・礼金なし」の物件もありますが、敷金を家賃の1ヶ月〜2ヶ月収めている場合が多いです。
では、実際に敷金はどれくらい戻ってくるものなのでしょうか?
引越し部の調査では、「敷金が戻ってきた(55%)」「戻ってこなかった(40%)」「追加料金が発生した(5%)」となりました。
約半数で敷金が戻ってきましたが、40%が敷金が戻らず、5%が原状回復のための追加料金が発生しています。
敷金が戻ってきた平均金額は7万でした。ワンルームもあれば1LDK、2LDKや3LDKと部屋のタイプも混在しており、また2年毎に更新費用がかかる契約多く、2年未満での退去が60%程度の場合の平均値です。
追加で払った場合の平均は6万円でした。タバコを吸っていたことによる部屋の傷み(クロスのヤニ汚れ、臭いの除去費用)が多く見られました。
ただし、クロスの耐用年数は6年(72ヶ月)とされており、6年以上住んだ場合は借主の負担(残存価値は1円で借主は1円のみ負担)となります。
原状回復とは?
建物は人が住んでいても住んでいなくても経年変化してます。
原則として、通常の生活をしていて生じた汚れや傷みをなおす費用は貸主の負担です。
入居年数(耐用年数)によって負担の割合が変わってきます。
ただし、「賃貸借契約」を締結している場合は、契約内容が優先されます。
大抵の賃貸借契約書では「敷金から原状回復費用を控除して残額を返金する」趣旨の条項が記載されています。
そもそも「原状回復」とはどうすればよいのでしょうか?
入居した時と同じ状態にしなければならないのではないかと思ってしまいがちですが、実際はそうではありません。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・ 過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
借主(入居者)の故意や過失によって生じた損傷は、借主の負担となります。
例えば、引越しの時に部屋を傷をつけてしまった、水漏れを放置して壁や床にシミ・カビや腐らせてしまった、壁やふすまなどへの落書き、キッチンの油汚れなどです。
それ以外の原状回復費用と、物件のグレードアップ(次の入居者のための新設備の導入など)の費用は、貸主の負担とされています。
ただし、通常損耗や経年変化の修繕費用に関しては、家賃に含まれていることが前提ですが、損耗の規模や居住年数によっては、借主の負担となる場合があります。
借主の負担となるもの、貸主の負担となるものは?
国土交通省のガイドラインには借主(入居者)の負担になるもの、貸主の負担となるものが記載されています。
基本は、通常の経年劣化や損耗は貸主負担です。
クロスや各設備にはそれぞれ耐用年数が定められています。
経年(入居年数)によって借主・貸主の負担の割合が変わってきます。
原則としては入居者の責任(故意・過失や通常の使用方法に反するなど)によって生じた傷や損耗は入居者が負担することになっています。
また民法では、他人の物を借りている人は相当の注意を払って使用・管理しなければならないという意味のことが規定されており、これを「善良なる管理者としての注意義務」、略して「善管注意義務」といいます。
この善管注意義務に違反していると入居者に原状回復義務が生じます。
本来は貸主負担である通常損耗に当たるとされるものでも、入居者が放置したり手入れを怠ったりしたことが原因で損耗が発生・拡大したとされる場合もあります。
(掃除をしなかった、メンテナンスや手入れをしなかったなど)
下記にガイドラインの中から、よくあるトラブルのもとや判断に迷うものを抜粋しました。
借主(入居者)の負担 となるもの |
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貸主の負担 となるもの |
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・テレビ設置による電気焼け(貸主の負担)
退去時のルームクリーニングに関しては、契約書で借主(入居者)負担として契約書に明記している場合もありますので、退去の際には賃貸借契約書の退去時の条項を一度確認してみてください。
東京独自の「東京ルール」に注意
東京都で部屋を借りた場合には、東京独自の賃貸条例があります。
それは「東京ルール」とも呼ばれ、国土交通省のガイドラインを受けて、東京都が施行した『賃貸住宅紛争防止条例』のことを指します。
貸主と借主の間に起こるトラブルをできるだけ減らすために制定されました。
賃貸物件の契約には、原状回復に関する明確な規定がなく、貸主と借主がお互い有利になるように解釈しようとします。
その解釈の相違によって起こるトラブルを防ぐことを目的に、契約内容や原状回復に関する借主への説明は、物件を仲介する不動産会社がおこなうよう義務付けています。
(出典:東京都都市整備局 賃貸住宅トラブル防止ガイドラインリーフレット P5〜6より)
退去時にどこまで掃除しておけばよいか?
原状回復の対象は、借主(入居者)の故意・過失による汚れや破損です。
引越し時の家具の搬入や家財道具の搬出でできたキズなどは、しっかりと確認して引越し業者の過失であればその費用を請求する必要があります。
また、油汚れやカビなどを防ぐために定期的に掃除(お手入れ)をしておくことも大切です。
では、引越し時にどこまで掃除しておけばいいでしょうか?
具体的には下記をやっておけば大丈夫です。
- ゴミの撤去
- 掃き掃除(床のホコリやゴミは取り除いておく)
- 拭き掃除
- 水廻りや換気扇(水垢、油汚れの除去)
- レンジ廻りの油汚れの除去
- 庭の雑草取り(一戸建ての場合)
エアコン内部洗浄(喫煙でタバコの臭いがある場合は入居者の負担)や水廻りの消毒、専門業者によるハウスクリーニングは貸主負担です。
次に部屋を借りる際には、入居時に汚れや傷みがある場合は写真をとって置くと説明する際にとても大きな材料になります。